じゃないと……あたしの身体がいろんな人を誘惑して、あたし自身も欲しがってしまう。


激しく鼓動を打つ心臓。

苦しくて、立ってられなくて、しゃがみ込むあたしに神楽さんが優しく肩に触れた。



「んっ……」


神楽さんの手に反応してビクンと跳ねる肩は、もうあたしの意志じゃない。


「だめ……っ、さわ、っちゃ……」

「もう黙ってろ」


ふわりと身体が宙に浮いて、気付けばあたしは神楽さんに抱きかかえられていた。


……だめ。

……だめだめ。


αが近くにいちゃ……だめ……。


───本能に抗えなくなる。




「だめっ……あた、し……ヒート……」

「知ってる。匂いが甘くなったから」

「神楽さん……が、危な……い」

「いいから黙れ。耐性付いてるって前にも言っただろ?」

「っ……ん……」