「そう言えば見てないわね。また食べてないのかしら……」

「様子見てきますね」


スッと頭を下げて姐さんの隣を横切る。




「……」

たぶん、あいつ、ここのルールとか知らねぇよな。

朝昼晩、決まった時間に居間に行かねーと飯食えねぇとか。掃除の時間とか……。


いろいろ教えねーといけねぇな。




「……」

あいつの部屋の前につき、声をかけようとして一瞬迷った。


桜夜組の養子になるんだから、“小林”じゃなくて“羽瑠”でいいか。

“お嬢”でもねぇし“さん付け”も、な……。



「羽瑠。いるか?」


投げかけた言葉に返ってくる事は無く、代わりに部屋の向こうで物音が聞こえた。


「神楽だ。入るぞ」


ゆっくり襖を開けると端の方に羽瑠がいた。

そのまま襖を閉めて中に入る。