「えー。でも僕、組長呼びに行ったし」
「あー……そうだったな。忘れてたわ」
そう言えばあったな。そんなこと。
「僕、βだから大丈夫ですよ。αってΩの匂いに反応するんすよね?なら僕そんなわかんねーし大丈夫です」
何を根拠に大丈夫って言ってんだか。
煙草を咥えると、後藤がポケットからライターを取り出す。
そのまま先端に火をつけて、今度は自分の煙草に火をつけた。
「フー……」
「あ、そう言えば組長、これからあの少女の手続きに行くって言ってましたよ」
「……は?」
「彼女、死亡届出されてるじゃないですか。死んでる人を養子に出来ないからって、自ら役所に行くみたいですよ」
「……お前情報早いな?」
「へっへ〜伊達に情報網やってないっす」
得意げに鼻を鳴らす後藤を無視して、煙草の煙を上に向かって吹く。