ギュッと目を閉じた瞬間───。
バキッと木が折れる音がした。
なのに全然痛みを感じなくて。
恐る恐る目を開けると、神楽さんがあたしを守ってくれていたんだ。
「無事か?」
「だ、大丈夫です……!」
その会話の間にいつの間にか敦雅さんがこっちに来ていて、あたしを襲おうとした人を殴り飛ばしていた。
「邪魔だからあっち行ってろ!」
敦雅さんの殺気も半端なかった。
そりゃそうだ。
桜夜組と桐龍組が戦ってるんだもん。
中途半端な気持ちじゃ勝てない。
だからあたしも守りたい。助けたい。
のに……弱いから足手まとい。
無力な自分が悔しくて、涙を流しながら衣吹さんの所に戻る途中。
桐龍組の若頭が後藤さんを殴る所を見てしまった。
思わずギュッと目を閉じて。
次に目を開けた時には、後藤さんは地面に倒れていた。