「痛っ」


力が緩んだ瞬間、衣吹さんのもとに駆け寄る。

落ちていた木製の棒を武器に、振り回しながら突き進むと衣吹さんを囲っていた人達が離れた。



あたしが衣吹さんを守るんだ。


これ以上こっちには近づけさせない……!



「うざ。調子乗んなよ」


風を切る勢いで三角コーンが飛んできた。

それはギリギリあたし達には当たらなかったけど、恐怖を感じるには十分すぎるくらいだった。


あたしを拘束していた人が一歩、また一歩と近づいて来る。



「お前らの置かれた立場わかってんの?」


持っていた木の棒は最も簡単に弾き飛ばされて、地面に叩きつけられる音が響いた。


「若!良いっしょ?この子と遊んでも」

「好きにしろ」


その声が聞こえた瞬間、目の前にいた人が気持ち悪いくらい口角を上げた。