「あたしが衣吹さんを守る」
泣いてばっかりじゃダメなんだ。
グイッと涙を拭って、近くにあった鉄製の棒を握りしめた。
弱かったら誰も守れない。
大事な人を守りたいから。
今が、
強くなる時なんだ。
錆びれたドアが開くときに鳴る、鉄と鉄が擦れるような音が聞こえて。
棒を握る手にグッと力を入れた。
複数人を連れ、サングラスをかけた黒髪の男の人がこっちに向かってやっくる。
先頭にいる人だけオーラが違う。
きっと、この人が桐龍組の若頭。
ごくりと息を飲み込んで、衣吹さんの前に出る。
桐龍組の人達の足音が反響して、倉庫中に響渡る音に人数の多さを痛感した。
その音がピタリと止んで。
若頭が声を出した。
「物騒な物持ってるね」
決して大きい声を出してる訳でもないのに、しっかりと耳に届く。