不意にドアの向こうから足音が聞こえた。

あたしと衣吹さんは息を潜めるように、動かなくなる。



「羽瑠ちゃんだけでも逃げて」


ぼそりと呟くような声にあたしは衣吹さんの腕を掴んだ。


「嫌っ」

「今動けるのは羽瑠ちゃんだけじゃない。神楽達をここに呼んできて」

「嫌っ……!」

「羽瑠ちゃん!お願い!」


「嫌……」



ポロッと思わず涙が溢れた。


わかってるよ。

あたしがここにいたって何も役に立たないってことも。

それよりもみんなを連れてきた方が良いってことも。


だけど……。


「こんな所に1人残すなんて……嫌……」


嫌なんだもん。

あたしだって桜夜組の一員。



衣吹さんのことを大事に思う、その中の1人だよ。



ギュッと衣吹さんの腕を握りしめた。