「……」
自室に戻ったところで、この不安な気持ちが無くなるわけもなく。
むしろ募っていくばかり。
衣吹さんが無事だとは限らない。
もしかしたら酷いことされてるかもしれないし、泣いてるかもしれない。
そんなの想像するだけでも嫌だ。
「……」
やっぱりじっとしてるなんて出来ないよ。
あたしはクローゼットから薄手の上着を取り出し、髪の毛は上でまとめ、キャップをかぶった。
これで少しは“男”に見える。
……少しは。
パチンと両頬を叩いて気合を入れた。
よし。行こう。
そろりと廊下に出て辺りを見渡すけど、全然声が聞こえない。
たぶん、まだ話し合いは終わってないんだ。
だったら今がチャンス。
そのまま玄関に向かって、振り返った。