「拾った」

「ちょ、ちょっと組長……!」


車から降り、歩き出す俺の後を慌ててついてくる子分にピタリと足を止めた。


「嬢ちゃん。ここが桜夜組(おうやぐみ)だ。おいで」


やっと顔を上げた。

が、目線の先がどこか違うところ。視点が定まっていない。


薬……?な、わけないよな。


どれだけこの娘を追い詰めたんだ?




門道を通って玄関に入る前に大声を出した。


衣吹(いぶき)!衣吹はいないのか?」

「何ー?お父さん……て、えっ!どうしたのその子、ボロボロじゃん」

「綺麗にしてやってくれ」

「う、うんっ!わかった!」


衣吹は慌てた様子で、裸足のままタイルの上に降りた。


「こっちにおいで。お風呂に入ろ?」


肩を抱きながら歩く姿を見ると……たぶん、2人は齢が近い。