「だから聞いただろ、“番になる選択肢は?”って」
姿を現した組長に、神楽さんがあたしから離れた。
「先ほど申した通り、そのような選択肢は兼ね備えていません」
「何故だ?」
「俺は桜夜組の一員であって、組長の右腕。その様なモノは不必要」
あ……。
神楽さんは桜夜組を愛してるんだ。
桜夜組の為に……生きる人。
全てを捧げてるんだ……。
「ふざけるな。何が不必要だ」
組長の声色に、一瞬にして空気が張り詰めた。
隣で聞いてるあたしですら、音を出しちゃいけないような雰囲気に、唾も飲み込めない。
「自分を疎かにする奴に俺は守られたくない。何も知らねぇガキが調子に乗るなよ。お前は1人で生きてんのか?」
「………いいえ」
「本気で守りてぇもんに会ったことあるのか?命賭けても守りてぇもん見つけたのか?」