だって、普通、好きでもない人を触ろうとする?
『……無事でよかった』
『嫌だ』
って、絶対言わないよね?
好きじゃなくても可能性はある。
えへへ。
希望が見えてきたかも。
なんてルンルン気分でいると、ふと神楽さんの声が聞こえた。
「……?」
振り返ると、襖の向こうから声が聞こえる。
ここ……組長の部屋だ。
今日も組長の部屋って……最近の神楽さん本当に忙しいんだなぁ。
って呑気なことを考えてたら。
「本当に羽瑠のボディガードを辞めるんだな?」
「はい」
と、とんでもない声が聞こえたんだ。
え?
血の気が一気に引いていくような、そんな感覚に襲われる。
辞めちゃう……?
神楽さんが?
どうして……?
頭の中がだんだん真っ白になって。
あたしは、無意識の内に襖を勢いよく開けたんだ。