ドキッーーーー!!



「神楽、俺だ。いるよな?」


組長の声に神楽さんの手がピクリと止まる。


その瞬間、あたしは逃げ出した。



「ごめんなさいっ……!」


と、謝って部屋から飛び出すと、驚きながらも組長はあたしに気付いて避けてくれた。

そんな組長にもう一度謝って、廊下を走る。




神楽さんのこと、嫌でも嫌いでもないけど……。

今は……気持ちの整理がついてないから。

雰囲気に飲まれてって嫌だから。


今だけは、逃げちゃうけど……許してほしい。







   ♢♦︎♢♦︎♢


翌日。


お昼の片付けが終わり、自室に帰ろうと廊下を歩いている時。

あたしは顔の緩みが治らなかった。



なぜかと言うと、神楽さんもあたしのことが好きなんじゃないかと思ったから。