「花……潰れちゃったね……」
ボソリと独り言のよう呟く衣吹さんは、あたしの隣に置いた花束を取ったのだろう。
ガサッと包装紙が擦れる音がした。
「ほんと……あいつらこんな花すら容赦ないんだから……」
その声は切ないながらも嫌悪が混ざっているようだった。
持って帰った花束は見れたようなものじゃない。
茎は折れ曲がり、花びらは数枚しか残ってなく、泥だらけになっていたのだから。
ギュッと膝を握りしめた時だった。
玄関のドアがガラッと開いて、あたしは勢いよく顔を上げる。
目の前に映る人影。
神楽さんと、後藤さんを含めた幹部が3人立っていた。
「か、神楽さんっ……!」
神楽さんの姿を見ると安心して涙が溢れた。
ゆらゆらと歪む視界を拭って、無我夢中でタイルの上を走る。