玄関先で、俯いたままのあたしはギュッと膝を抱える。
「羽瑠ちゃん……神楽は大丈夫だから……」
衣吹さんがあたしの肩にソッと手を置いた。
「部屋に戻ろ?」
「……」
衣吹さんの言葉に首を横に振る。
そしたら小さいため息が聞こえたんだ。
神楽さんはあの後すぐ病院に行った。
赤黒く染まるシャツを見て幹部の人が大騒ぎをして。
そこであたしは自分が今、家に帰ってきたと理解した。
怖い。
神楽さんが帰ってこないと思うと怖くてたまらない。
ギュッと力を入れて、少しでも気を紛らわせる。
大丈夫だよって。
帰ってくるって。
あたしが泣くのはお門違い。
泣かないから、強くなるから……どうか……無事でいて……。