「羽瑠っ……!」
神楽さんの切羽詰まった声が聞こえたかと思ったら、ギュッと背後から抱きしめられた。
「くっ……」
グッと一瞬だけ力が込められ、神楽さんの唸るような、くぐもったような声に胸がざわつく。
すぐにあたしから離れ、そのまま壁際に追いやられる。
その時見えた神楽さんの横顔が、殺気に満ちていた。
横顔なのに、そう思ってしまうほどの気迫に本気なんだって。
「……っ」
何も言えなかった。
その一連の動きが一瞬すぎて頭が追いつかない。
だけど、神楽さんがあたしに背を向けた瞬間、ヒュッと息が出来なくなったんだ。
「か、神楽さんっ……血!!」
神楽さんの背中が赤黒く染まっている。
「斬りつけたはずなのにバケモンかよ……!」
誰かがそう叫んだ。
グシャッと花束を踏む音と共に。