瞬間。
ゴッと鈍い音を立てて、神楽さんがその男の人を殴り飛ばした。
「大丈夫か?」
びっくりして、すぐに声が出なくて何度も頷く。
「俺から離れんなよ」
その言葉にまた頷いて。
あたしを守るように、神楽さんは1歩前に出た。
再び始まった殴り合い。
桐龍組は2人いるみたいだけど、神楽さんは全然負けてない。
むしろ押してる方。
生々しいぶつかり合いに怖くて視線を逸らすと、花束が端の方に転がっているのを見つけた。
なんの躊躇いもなく行ってしまったあたし。
ただ、花束を拾いたくて。
持って帰りたくて。
だけど、この行動が後に悲惨なことになるなんて思ってもみなかったんだ。
背後に迫っていた男の人に気付かず、あたしは花束に向かって手を伸ばす。