つけられてるって……悪い人達のことだよね?


もしかして……前に千葉さんが言ってた……桐龍組?


あたしはこんなにも動揺してるのに、神楽さんは至って冷静沈着だった。


「走れる?」

「だ、大丈夫です……」


ドッドッと激しく動く心臓。

上手く唾も飲み込めないし、手だってじんわりと汗が滲む。



「じゃあ、俺が合図したら全力で走って」

「わかりました」


その返事を最後にあたし達は会話を止めた。

無言でアスファルトを歩き、神楽さんの合図を待つ。



変な緊張があたしを襲って、握りしめた花束が滑り落ちそうになる。


「……」

「……」



数分経ったところで、神楽さんがあたしの背中を押した。


「行け」


瞬間。

あたしは全力で走り出す。


ドッドッと激しく動く心臓は、桐龍組に対しての恐怖なのか、それとも経験したことのない体験に、ちゃんと出来るのかっていう緊張なのか。