「……どうして?」
「もっと強くなったら言うんだって。そうしなきゃ、お父さんに認めてもらえないからって」
ニッと笑った衣吹さんは頬をピンクに染めて、とても可愛かった。
それと同時にあたしもニヤけてしまった。
認めてもらう為に頑張る敦雅さん。
ちゃんと先のことまで考えてるんだなって思うと、素敵なカップルだなぁ。
「まぁ殴られるだけじゃ済まないかもね」
遠い所を見ながらフッと笑った衣吹さんに、あたしは目を丸くした。
「え」
「嘘嘘。冗談だって」
パッと表情を変えて、あははと笑う衣吹さんだけど、全然冗談に聞こえなかった。
8割方本当な気がする……。
「今度は羽瑠ちゃんのばんだよ」
衣吹さんが身体を仰け反って廊下側を見るから、あたしも同じように真似をする。