桜夜組の組長の斜め前に座るあたし。

組長の目の前は、あの女の人。



そして組長の隣に並ぶのは───……黒髪で、スーツを着た知らない男の人。



ピリッと張り詰めた空気に呼吸すらままならない。



「言うよ……?」


あたしの隣にいる女の人が再確認をして。

小さく頷いた。




『私のお父さんに話してもいい?』


あの女の人に言われた言葉。

煙たがられるΩにとって、第二の性を誰かに知られるのは生き地獄のようなもの。


興味本位でβに狙われて、誘惑してるからとαに遊ばれる。

中にはゴミクズのような目で見られ……人間扱いされない。


こんな生きた心地がしない世界で『私達があなたを守るから』と、一緒に泣いてくれたあの女の人の言葉を嘘だと思いたくなくて……。



覚悟を決めたんだ。