お嬢を見たら、あの時の事を思い出すから、ずっと避けてきた。


見たくない。

思い出したくない。


あんな事……なかったら良かったのにって。




「そんなに自分を責めないで」


お嬢の瞳は1度もブレなかった。


真っ直ぐで、悔しいけど……かっこいい。



両頬にあるお嬢の手をソッと外して、そのまま握りしめた。



「ムカつくくらい……かっこいいな。お嬢は」


今俺はどんな顔をしてるんだろうか。

泣きそうな顔?

悔しい顔?


……絶対、かっこ悪い顔してる。



「悪かった。避けて……。どう接すればいいのか、わかんなかったんだ……」


トンッとお嬢の肩に頭を載せた。


ふわりと鼻を掠めるお嬢の香り。


昔から好きだった。この香り。


そして、同じくらい怖かった。


また理性を失うんじゃないかって。