初めてα性を恨んだ。

こんなわけわかんねぇ性なんかいらねぇって。

もうここには居られねぇって。


そう思ったのに。




『逃げるな。自分のα性を受け止めろ。それはお前の一部なんだ』



組長の言葉は、全然優しくなかったけど……俺を捨てないでくれた。


だからもう、同じ失敗を繰り返さないようにって誓ったんだ。




「だったら何?」


お嬢が俺の顔を両手で掴んで、強制的に視線を合わせる。


「肌に触れたからなに?それでも敦雅はここにいるじゃん。それって……別に敦雅は問題無かったって言うことじゃないの?」


お嬢の真っ直ぐな瞳に、言葉に、何故か思考が止まった。


「敦雅の悔やむ気持ちはみんな知ってる。でも、それを理由に見たくないものから目を背けていいの?」


何か、俺の中で大きなものが崩れた気がした。