「敦雅がウチに入って半年もしないくらいだったかな。敦雅、私のフェロモンにあてられて理性失ったの」
「え……」
あの、敦雅さんが……?
負けず嫌いで、プライドが高くて、ちょっぴり俺様感ある、敦雅さんが?
「私もヒートであんまり覚えてないんだけど、それ以降、敦雅が私のことを避けるようになって……」
どこか、切なそうに遠くの方を眺める衣吹さん。
その姿を見ると苦しくなって、自然と手の平に力が篭る。
そしたら氷嚢の中の氷が動き、小さな音を立てた。
「自分への戒めなのかなって。そう思ったら動けなくなった」
「か、神楽さんは……?衣吹さんを守るために耐性付けてるって……」
「そのときちょうど外出してたの。で、偶然にも私は敦雅と一緒にいた」
……っ。
想像したら泣きそうになった。