「そ、そんだけ笑う元気あるなら大丈夫だな!」


そう言って逃げるように自ら襖を勢いよく閉めた敦雅さんは、ドスドスと足音を立てて行ってしまった。


それでもやっぱり可笑しくて。

あたしは小さく笑ったんだ。



そして数分も経たないうちに、また名前を呼ばれた。


「……羽瑠ちゃん」


今度は衣吹さんだ。


慌てて襖を開けると、そこには目にいっぱいの涙を溜めている衣吹さんが。


「い、衣吹さんっ……!」


ソッと衣吹さんの腕を掴む。

そしたらポロポロと涙を溢し始めた。



「ごめんね、許してなんて言わないけど……ごめんね」

「な、泣かないで衣吹さんっ……」

「裏切られる苦しみ、私が1番知ってるはずなのに……」


そうだった……。

衣吹さんも先輩に裏切られたんだ。