「やりたいからに決まってんじゃん」


あの優しかった佑輝くんはどこにもいない。

あたしの目の前にいるのは、αとしての眼差しを向ける“男”そのもの。



「一緒に暮らしてた時からアンタの匂い、気になってたんだよね。すっげー甘い匂いするし」


ズイッと佑輝くんの顔が近付く。


「“いつかは”って狙ってたけど、まさか捨てられちゃうなんてね」


嘲笑うようににっこりと綺麗な弧を描く佑輝くんに、全身の力が抜けていく。

そしたらもう1人が片方の腕をつかんで。

あたしは2人に支えられるような形になった。



「え?何?親の目盗んでやるつもりだったの?」

「そうだよ。なのに簡単に捨てられちゃってさ」


グイッとあたしの頬を乱暴に掴んで、無理やり視線を合わせる。



「でも好都合だった。こっちの方が隠さなくて済むしね」