♢side 組長♢
あれは5月末の雨が降る日だった。
前が見えないくらいの土砂降りの雨に、ふと車の窓から視界に入ったモノ。
「おいっ、止めろ」
ヘッドライトに照らされ、橋の上で身を投げ出そうとする少女の腕を力一杯引く。
「……っ」
あまりにも細い腕にゾクリとした。
ドサッと尻もちを付いた少女の身体は痩せ細り、まるで魂が抜けたような状態だった。
生きているのが不思議なくらい。
「組長」
傘をさす子分。
「知り合いですか?」
「いや……」
このときやっと少女が声を出した。
「お願い……死なせて……」
か細い声で、涙を流しながら。
この少女に何があったのか。
なぜこんなにボロボロなのか。
「嬢ちゃん何があった?」
「……」