車の中、すごくいい匂いがするし……。
運転席側のドアが開いて、神楽さんが乗り込んできて。
そのとき一瞬だけ距離が近くなる。
「っ……」
ふわりと鼻をかすめた香りは、車の中と同じ匂いがしてドキッとした。
これは、神楽さんの匂い。
つまり……フェロモンとも言えるわけであって……。
ドキドキと早くなる鼓動にギュッとスカートを握った。
ダメダメ。
意識しちゃダメ。
「羽瑠……?」
「えっ……?」
名前を呼ばれて、神楽さんの方を向いてびっくりした。
だって神楽さんが驚いたような表情をしていたから。
「抑制剤飲んだ?」
「え……?」
抑制剤……?
それは一応毎日飲んでる。
睦美さんのお手伝いで台所に立つようになってから、幹部の人達も手伝いに来るっていうのがわかったから飲むようにしてる。