「敦雅もあり得たんだ」
組長の部屋から出て、あたしの隣を歩く衣吹さんが独り言のように呟いた。
「真相が知れて良かったね?たぶん敦雅ももう来ないでしょ」
「ん……なんか、可哀想なことしちゃったな……」
敦雅さん、途中から全然顔上げなかった……。
「仕方ないよ。こーいう世界だもん。甘えがあったら上にあがれないよ」
「ん……」
「羽瑠ちゃんが気にすることないって」
そうは言ってもやっぱり気になるわけで。
敦雅さん、大丈夫かなぁ……。
「こーいうの普通だから」
「えっ……」
「心配しなくてもそんなことで凹む敦雅じゃないよ。言ったじゃん?負けず嫌いだって。明日にはケロッとしてるよ」
ニッと笑う衣吹さんを見て、あたしは足を止めた。
も、もしかして……。
「顔に出てた!?」
「うん。ショボーンとしてた」