「それが“偽りの優しさ”だと言っても?」


えっ……?


心臓がドクンと鳴った。



「“組長に頼まれなかったら優しくしてなかった”って言ったらどうする?」


真っ直ぐと見つめられた瞳は、離すことなくあたしを捕らえる。

神楽さんの瞳の奥で光る“何か”があたしにはわからない。



「それでも……あたしは、神楽さんのことを“優しい人”って思います」


見つめ返した。力強く。


あたしに対する優しさが例え嘘だとしても、造り物だとしても、今まで神楽さんと過ごした日常は本当だから。


笑った顔も、心配してくれるのも、背中を押してくれるのも。

全部全部、嘘じゃないって思えるから。



神楽さんがパッと視線を逸らした。

それも顔ごと。


そしたら組長が笑い出したんだ。