まさか衣吹さんがって……。
あまりにも衝撃的なことを聞いて、騒がしいフードコートのはずなのに、周りの雑音が全く入ってこないような……そんな感覚に陥る。
「お、桜夜組の人……組長は何て……?」
「怒ってたよ、すごく……権幕になって。みんなで乗り込もうとしてたんだけど、私がそれを止めたの」
「え……、どうして……?」
「せっかく築き上げたものが、一瞬で無くなると思うと嫌だったの」
「……」
こう言うとき、なんて言葉を返したらいいのかわからない。
衣吹さんには衣吹さんなりの考えがあって事情がある。
「素性がバレて、“第二の性を心配することがないけど友達がいない道”と、素性を隠して、“友達はできるけど第二の性に怯える道”どっちが正解だったんだろうね」