独り言のように呟いて、衣吹さんは再び口を開いた。
「今の高校、良いところともあれば悪いところもあるんだぁ……」
伏し目がちな視線はどこか違うところ。
たぶん、今から話すことは衣吹さんにとってデリケートな、言いにくい部分なんだ。
「私が桜夜組の娘だって知ってる人は、怖くて近寄らなかったって言ったじゃない?だからΩだってバレても“関わったらまずいから”って安全だったの」
「……」
「だけど、今の高校は身バレしてないから……」
「えっ……、もしかして……」
「うん。αにやられちゃった」
衣吹さんは笑った。
眉毛を下げで切なそうに。
「憧れてた先輩だったの。だからかなぁ……油断してた」
「……そんな、」
胸が締め付けられそうになる。