メイルの顔は、真剣そのものだ。マッシュの顔からは少しだけ寂しさが垣間見える。メイルが抱きかかえているウサギもじっと私を見つめている。

「様子見している間に、準備を進めるのも手かもね」
「なるほど、確かに…」 
「もさ、レジスタンスの所在がバレて、攻め込まれればさっさと逃げられるもの」
「…」

 確かに、メイルの言う事は参考になる。

「ナターシャ、どうする?」
「…しばらく様子見しましょうか」
「そうだな、それで行こう」

 こうして、ザナドゥの町を出る事は一旦保留となった。

「それと、ナターシャ。私から1つ良い?」
「はい、メイルさん」
「ナターシャの名前の女を密かに集めているって話なんだけど…」
「ああ…」
「まさか、レジスタンスの人達、所在がバレればあなたを差し出す気なんじゃ?と思ってしまって」
「…!」

 私の身代わりに、レジスタンスを見逃してくれ。という算段。確かに言われてみれば、そういう策も有りうるのだろうか…。

「だから、町を出るなら誰にもバレずにひっそりと行くしか無い。更にレジスタンスの所在がバレる前にね。私も強力するから」
「なら…もう今から出ていった方が…」
「…」

 話は振り出しに戻る。今から行くのか、少し様子見してから行くのか…

(安全策を取るなら、今からでも行った方が良い)

 ここで私はメイルに、避難に適した良い町を知っていますか?と問いかける。

「個人的にはローティカか…魔女の街の二択かしら」
「…」
「ローティカなら、狼男を嫌う人間もいるけど安全で、皇帝関連の情報も掴みやすいし。魔女の街は情報は入りにくいし悪い魔女もいるから」 
「リーク、どうする?」
「…ローティカにするか?」
「マッシュ、あなたは?」
「メイルに任せるよ」

 結論はローティカの街に決まった。