「…わかった」

 ここで町長が口を挟んだ。

「こちらが悪かった。レジスタンスに誘うのはやめる。済まなかった」

 町長の謝罪を、私はどこかまだ疑心暗鬼が取れないまま眺める。

「じゃあ、戻ろうか」
「はい…」

 こうして、私達は町長の家に戻る事になった。その帰り道にて、ケインも謝罪の言葉を紡いだのだった。

「済まなかった…」
「…」

 私はケインの謝罪を受けるも、まだ疑心暗鬼が溶けていなかった。

「まさか、レジスタンスに誘うために、優しくしてくれていたの…?」

 そんな言葉が、口から突いてでる。

「それは違う!信じて欲しい!」
「ナターシャ…」

 ケインとリークの言葉を受け、冷静さを取り戻した私はケインにごめんなさいね。と謝る。

「いや、そう思われても仕方の無い事かもしんねえ…」

 ケインはうつむいて、そう答えたのだった。

「今日の事は誰にも言わないでほしい」

 町長にそう頼まれた私とリークはその提案を受け入れ約束し、リークの家へと戻ったのだった。

「…」
「…」

 リークの家に戻ったものの、無言の雰囲気が漂う。

(こういう雰囲気、苦手だ…)

 どう声をかけたら良いか、何を口に出したら良いのか分からない。ただ、私の中ではある考えが浮かび上がっていた。
 それは、このザナドゥの町から出る事である。レジスタンスがある以上、いつかは戦いに巻き込まれる可能性は高くなった。

(本当は、ここで平穏に暮らしたかったけど…)

 それにあの男の事だ。必ずや嗅ぎつけて粛清しにかかってくるのは想像に固くない。

(だけど、避難してきたばかりだしなあ…)

 しかも、メイルとマッシュにどう伝えるべきか。そこも悩む部分になっていた。
 正直に打ち明ければ、町長との約束を破る事になってしまう。
 そして、ザナドゥの町を出てどこに向かうのか。街によっては狼男への迫害も考えられる。少なくとも帝都は無理だしローティカもどうなのか…。

(どうしよう)

 このタイミングで、私とリークの目があった。リークは視線を逸らさず、私を見ている。

「ナターシャ?」
(言うなら、このタイミングだろう)
「リーク、私ね…この町から出ようと思うの」