私達はその後ごはんを食べきり、少し休憩した後家の外へ出る事にした。ランタンをもって迷彩魔術のかかったネックレスも忘れずにつける。

「寒いわね…」

 外は思ったより冷気が漂っている。羽織を着てきて正解だった。

「こんな感じかぁ」

 木々を分けて進むと、地面は土から砂浜へと変わる。砂浜の向こうに海がある。

 ざーん…ざーん…

 波の音が絶え間なく聞こえてくる。時折波は勢いよく飛沫を上げる。

「ずっといたくなるな」

 リークがそうぼそりと呟いた。確かに波の音を聞くと、そんな気持ちにさせてくれる。
 
「また昼にも来てみましょうか」
「そうだなあ…」
「何か貝とか取れるかしら?」
「確かに、試してみたい」

 海をひとしきり眺めた後、私達は家へと戻った。

「それにしても寒かったわね…」
「ナターシャ、ホットミルクつくろうか?」
「良いの?」
「これくらい任せてくれ」

 リークがミルクを沸かし、ホットミルクを作ってくれた。

「頂きます…」

 少し冷やしてから、一口飲むと身体の奥底まで熱がじんわりと伝わって来る。

「温まるわ…ありがとう」
「いえいえ」
「リークは飲まないの?」
「大丈夫だ。寒さには強いしな」

 リークは穏やかな表情で、ホットミルクを飲む私を眺めている。

「これからここで暮らすのよね」
「…そうなるな」
「どうなるかしらね」

 リークは少し天井を眺めた後、口を開く。

「早く平穏になりたい」
「…!そうよね…」
「戦争なんて、傷つくだけだ」

 先程まで穏やかな表情を浮かべていたリークの悲壮感漂う顔つきを見た私は、こういった内容の話を振った事にやや罪悪感を感じてしまった。

「ごめんなさいね、こんな話して」
「ナターシャは悪くない。誰だって気にする事だろう」
「そうよね…私達の他にも、避難していく人は…いるでしょうし」

「そうだな…」 

 リークのこの言葉を最後に、しばらく沈黙が流れる。

(…)

 そんな沈黙を断ち切るように、私は時間だしそろそろ寝ましょうか。と彼に告げた。

「じゃあ、お休み」
「お休みなさい」

 自室に入り、布団を被る。大きく深呼吸してから目をぎゅっとつぶった。