ごはんが炊ける良い匂いを嗅ぎながら、先にスープを食卓テーブルに置いた。スープ用のお皿も置いておく。

「じゃあ、ご飯を見に行く」

 リークがそう言って、お釜へ赴き、蓋を開ける。

「うん、良い感じだ」

 リークの表情と声からは、自信と手ごたえを感じる。これは相当楽しみになってきた。

「とりあえず、ボールに入れようか」

 リークは炊けたごはんをボールに移して、そのまま食卓テーブルへと持ってきた。鯛はお皿に移し、骨やヒレ何かを取っていく。

「手伝うわ」
「ありがとう、助かる」

 お箸やフォークで骨をちまちま取っていく。骨を何とか取り終えた後は、鯛が乗ったお皿を食卓テーブルに置く。

「とりあえず、白いお皿にごはんと鯛を乗せて混ぜて食べてみよう」
「ええ、そうね…そうしてみましょう」

 先にご飯をお皿に盛り、その上に鯛の身を置き、混ぜてみる。そしてスプーンで大体一口大にすくって口の中に入れた。

「!」

 柔らかな鯛の肉と、醤油と生姜が効いたごはんの相性がこれでもかというほどに合っている。とても美味しい。こんなごはんは初めてだ。

「お、美味しい…!」

 それにごはんも柔らかい。ほくほくしていて、文字通りごはんが進む。
 スープも飲んでみる。コンソメの味と、野菜の味わいがぎゅっとスープに濃縮されていてこちらも美味しい。

「ごはんもスープも美味しいわ」
「良かった」
「鯛のご飯って、こんな味なのね…」
「初めて食べたが、これは良いな、またやってみたい」

 リークが顔をほころばせて、もぐもぐとごはんを頬張っていく。それくらい気に入ったようだ。
 そんな中。ふと、窓の向こう側の景色が目に入る。

「真っ暗ね」
「そうだな、月が出ている」
「ほんと。もしかして月の光が海面に届いてる?」

  席を立って窓へ近づくと、確かに青白い月の光がが海面を照らしているように見える。

「綺麗だな。ずっと眺めたい景色だ」