山の中へ入っていく時、マッシュが足を止めた。

「南へ降る前に水晶窟へ行かんか?」

 どうやら、金銭面を工面するために、水晶を出来るだけ掘り出して置きたいという事だった。
 確かに避難生活はどれくらいになるか分からない。ならより長く生活する為にも、お金の工面は必要だ。

「私は賛成です。リークとメイルさんはいかがですか?」

 リークとメイルも頷いて、賛成の立場を取った。
 こうして水晶窟に到着すると、リュックサックに詰め込められる分だけ水晶や水晶柱を掘り出す。

「これくらいあれば大丈夫じゃな」

 マッシュの言葉に私は頷く。するとガサガサと物音が聞こえてきた。

「隠れて」

 メイルが小声で、奥に隠れているよう私達へ促す。物陰から様子を伺うと、訪れたのは陸軍の兵士だった。

「ここか」
「立派な水晶窟だ」

 陸軍の兵士は、何やら入り口付近を物色しているように見える。その隙にメイルが水鏡の水をその場に垂らし、魔法陣を描く。

「行って」

 メイルに促され、魔法陣へ足を伸ばし転移した。転移した先はハイランドの街。以前と変わりなく人々が賑やかに過ごしている。

「ごめんなさいね、時間が無かったから転移先は決められなかった…」

 メイルは申し訳なさそうにしているが、ハイランドなら十分当たりだろう。メイルもハイランドの街に転移したのは把握しているようだ。

「ここから汽車に乗ればすぐじゃないかしら?」
「本当かい?メイル」
「ええ、まずは駅に向かいましょう。リーク達、お金はあるかしら?」
「ああ、あります」

 リークはそう言うと、リュックサックを親指で示した。

「じゃあ、行きましょう」

 少し歩いた先に、駅があった。私達はメイルに教えられながら切符を購入し、汽車に乗る。

(前世でも汽車に乗ったなあ)