「これでよし、と」

 マッシュとメイルの家もミニチュアにすると、いよいよリークの親へ会いに行く事となる。

「水鏡は使えませんか?」

 と、私が聞くと、メイルは地面に水鏡を作ると言い出す。はたしてどのように作るのか。

「水鏡の水を地面にと…」

 メイルは地面に水鏡の水1すくい分を撒き、上から木の枝で魔法陣を描いていく。魔法陣を描き終えると、そこが
青白く光を放つ。

「出来たわよ」

 メイルの号令で、私達はそこへと足を踏み出した。

「わっ…」

 転移した先は、木でできた家が4.5軒ほどある開けた集落。山のふもとのあの集落と似ている気がする。

「ここだ」

 リークが指さした先にあったのは、木でできた大きな家。家の左側には大樹が植わっており、そばには井戸も見える。
 リークがすたすたと家の扉まで歩いてノックをすると、中から中年くらいの白い帽子を被った女性が現れた。

「お母さん、戻ってきた」
「リーク…!」

 リークの母親がリークに飛びつくように抱き締める。そして私とメイル、マッシュに目を向けた。

「えーと、リークの知り合いですか?」
「ああ、そうだ。皆良くしてもらっている」
「そう。では…良かったら中へどうぞ」

 リークの母親がそう硬い作り笑いを浮かべて、私達へ促すも、リークは首を横に振る。

「いや、ここでいい。急いでいるから」 
「リーク…」
「そっちにも、避難令は届いているか?」

 リークの母親は目を伏せる。そして無言のまま一度家の奥まで消えると、再度避難令を持って姿を表した。

「これ…」
「どうするんだ、避難するのか?」
「いえ、私達はここに残るつもりよ。リークは逃げなさい」
「え…」

 リークの母親の目はまっすぐリークを捉えている。そこに迷いは一切見られない。