この後もキムの元にはグッドニュースとバッドニュースの両方がもたらされた。そのニュースもだんだんと、バッドニュースの比率が大きくなっていく。
 そしてリークとナターシャが住まう森がある一帯の近くにも、ついに敵国の侵略が近づいてきたのだった。

「いけー!」

 敵国は、別の国と同盟を結び、更には強力な軍隊を整え反撃を開始した。
 いつの間にか形勢は逆転していったのである。
 …リークとナターシャは、戦争に関する情報をほぼシャットアウトしていた事もあり、気づくのが遅くなっていたのであった。それにマッシュらも、迅速に情報を得られていないのもある。

「避難令は出したか?」

 と、キムが聞くと、大臣は出したと答える。

「ビラを配りましてございます」
「分かった。なら大丈夫だろう」

 キムはどちらかといえばどうでもよい、と言うような薄い反応を見せた。
 
(避難するかどうかは、民が決める事だしな)

 こうして、避難の為の疎開を促すビラが投下された。ビラを受け取った者は、パニックになったり覚悟を決めたり悩んだり悲観にくれたりと各々違う表情を見せた。

「疎開だと!」
「もう…私達死ぬのよ…」
「皇帝はこの地は守らないと言うのか!」
「ああ、もう終わりだ…」
「準備しなくては…」

 そしてビラは、マッシュとメイルの元にも届いた。最初に見つけたのはマッシュ。ビラを見るや否や、大慌てで薬を調合していたメイルの元に向かう。

「た、大変じゃ!」
「どうしたのよ?」
「これを、これを見てくれ…!」
「…避難ですって?」

 メイルとマッシュの顔が次第に青ざめていく。

「…リーク達は知っているかしら?」
「わからん…」
「…リークの家に向かうわよ!」

 メイルは薬の調合を止めて、急いでコートを着ると家を飛び出して行った。

「ま、待ってくれ…!」

 マッシュも老体に鞭打ちながら、メイルの背中を追いかける。