一発の砲弾を皮切りに、銃撃戦が展開される。これが開戦の合図となった。
「撃て!」
「撃てー!」
「ひるむなー!」
周辺の土地は瞬く間に火薬と血の匂いで一杯になる。パッパッと火薬が炸裂し、鉄の玉が飛んでいく。
ここは、リークとナターシャが住まう家から北西に大きく離れた場所にある相手国との国境、ムルーリと呼ばれる地帯である。この一帯はナターシャが生きていた時よりも大分前から、緊張状態にあったがいよいよその緊張状態が極限まで高まり、爆発する事になった。
「進め!」
隊長の合図で兵士が一気に、相手国との国境に敷かれた堀を超えていく。相手の兵士も堀の向こうから大砲や銃弾を放ち応戦する。
「かかれ!」
だが相手国の方が兵士数は少なかった。あっと言う間に堀は堰を切ったダムのように崩壊していく。
「いけー!」
兵士はどちらも人間と獣人の混合隊だ。人間と人間、獣人と獣人、人間と獣人が激しく撃ち合う。
「もらったあ!」
獣人の中には、討ちとった人間や獣人を喰らう者も出始めた。それだけ彼らの精神は極限状態に達していたのだ。
「ひひ…」
「あわあ!助けてくれ!捕虜になる!」
各地ではこのような命乞いの場面も見られだした。だがこうした命乞いが受け入れられる確率は勿論100パーセントではない。
捕虜になったとしても、大抵の兵士は劣悪な環境の中過酷な強制労働と暮らしを強いられる事になる。
その頃、キムは王の間にて戦況を聞いていた。
「どうだ?陸軍大臣よ」
「皇帝陛下、先程報告が届きました」
「聞かせよ」
「ムルーリで我が軍は善戦し、国境を超えました」
「被害は?」
「あちらの方が甚大のようです」
陸軍大臣からの報告を聞いたキムは、にやりと笑みを浮かべた。
「では、表に出るとするか」
キムは玉座から立ち上がり、歩き出した。彼が向かう先は宮廷のバルコニー。このバルコニーこそ、一般市民が皇帝の姿を拝謁出来る唯一の場所となる。
「皇帝陛下のお目見えです」
既にバルコニーの周りには多くの一般市民に貴族や富裕層の者が並んで、キムを待っていた。
バルコニーに到着したキムは、そんな彼らを冷たい目で見下ろしながら口を開く。
「皆の者、この場に集まり大義である」
キムの挨拶に一気にわあっと歓声が湧いた。
「我が軍は、ムルーリにて開戦し、見事善戦している。このまま我らが勝利を手にし、この国をより豊かに強くしていく事を約束しよう」
と、キムが話し終えた時。どこからともなく乾いた銃声が響いた。幸いというべきか銃弾はキムには当たらなかったが銃声が響いた瞬間、一気に市民らはパニック状態に至る。
「きゃあああ!」
「うわあああ!」
銃弾を放った犯人はすぐに兵士によって捕縛された。キムはその一部始終を、駆けつけた兵士に守られながらバルコニーから見下ろす。
犯人は中年の狼男。帽子を被り人間になりすましていたようだ。
「また戦か!戦ばかり増税ばかりもううんざりだ!」
と、取り押さえられた犯人は叫ぶ。
「あの悪しきナターシャ妃が死んでから、更に戦ばかりになるとはな!あのナターシャも地獄で悲しんでおるわ!」
犯人の「ナターシャ」という言葉に、キムは不快そうに眉をしかめた。
「あの狼男、銃殺刑にせよ」
「よろしいので?」
「ああ、顔も見たくない」
バルコニーの下の広場は既に人が閑散としている。キムはバルコニーの下の風景を忌々しく見ながら、玉座へと戻っていく。
「ああ、台無しだ」
「皇帝陛下…」
「陸軍大臣を呼べ」
キムのあからさまに不機嫌そうな声を聞いた、陸軍大臣がすぐさま駆けつける。
「はっ、皇帝陛下ここに」
「もっと攻めよ。そして兵を集めよ」
「ははっ」
キムは玉座に座り、足を組む。そこへ家臣の1人が慌てふためきながらやってきた。
「あの狼男が逃げました!我が兵も3人程、被害を…!」
「ええい、何をしている!必ず捕まえて銃殺刑にせよ!」
キムの荒々しい声が響き渡る。
「撃て!」
「撃てー!」
「ひるむなー!」
周辺の土地は瞬く間に火薬と血の匂いで一杯になる。パッパッと火薬が炸裂し、鉄の玉が飛んでいく。
ここは、リークとナターシャが住まう家から北西に大きく離れた場所にある相手国との国境、ムルーリと呼ばれる地帯である。この一帯はナターシャが生きていた時よりも大分前から、緊張状態にあったがいよいよその緊張状態が極限まで高まり、爆発する事になった。
「進め!」
隊長の合図で兵士が一気に、相手国との国境に敷かれた堀を超えていく。相手の兵士も堀の向こうから大砲や銃弾を放ち応戦する。
「かかれ!」
だが相手国の方が兵士数は少なかった。あっと言う間に堀は堰を切ったダムのように崩壊していく。
「いけー!」
兵士はどちらも人間と獣人の混合隊だ。人間と人間、獣人と獣人、人間と獣人が激しく撃ち合う。
「もらったあ!」
獣人の中には、討ちとった人間や獣人を喰らう者も出始めた。それだけ彼らの精神は極限状態に達していたのだ。
「ひひ…」
「あわあ!助けてくれ!捕虜になる!」
各地ではこのような命乞いの場面も見られだした。だがこうした命乞いが受け入れられる確率は勿論100パーセントではない。
捕虜になったとしても、大抵の兵士は劣悪な環境の中過酷な強制労働と暮らしを強いられる事になる。
その頃、キムは王の間にて戦況を聞いていた。
「どうだ?陸軍大臣よ」
「皇帝陛下、先程報告が届きました」
「聞かせよ」
「ムルーリで我が軍は善戦し、国境を超えました」
「被害は?」
「あちらの方が甚大のようです」
陸軍大臣からの報告を聞いたキムは、にやりと笑みを浮かべた。
「では、表に出るとするか」
キムは玉座から立ち上がり、歩き出した。彼が向かう先は宮廷のバルコニー。このバルコニーこそ、一般市民が皇帝の姿を拝謁出来る唯一の場所となる。
「皇帝陛下のお目見えです」
既にバルコニーの周りには多くの一般市民に貴族や富裕層の者が並んで、キムを待っていた。
バルコニーに到着したキムは、そんな彼らを冷たい目で見下ろしながら口を開く。
「皆の者、この場に集まり大義である」
キムの挨拶に一気にわあっと歓声が湧いた。
「我が軍は、ムルーリにて開戦し、見事善戦している。このまま我らが勝利を手にし、この国をより豊かに強くしていく事を約束しよう」
と、キムが話し終えた時。どこからともなく乾いた銃声が響いた。幸いというべきか銃弾はキムには当たらなかったが銃声が響いた瞬間、一気に市民らはパニック状態に至る。
「きゃあああ!」
「うわあああ!」
銃弾を放った犯人はすぐに兵士によって捕縛された。キムはその一部始終を、駆けつけた兵士に守られながらバルコニーから見下ろす。
犯人は中年の狼男。帽子を被り人間になりすましていたようだ。
「また戦か!戦ばかり増税ばかりもううんざりだ!」
と、取り押さえられた犯人は叫ぶ。
「あの悪しきナターシャ妃が死んでから、更に戦ばかりになるとはな!あのナターシャも地獄で悲しんでおるわ!」
犯人の「ナターシャ」という言葉に、キムは不快そうに眉をしかめた。
「あの狼男、銃殺刑にせよ」
「よろしいので?」
「ああ、顔も見たくない」
バルコニーの下の広場は既に人が閑散としている。キムはバルコニーの下の風景を忌々しく見ながら、玉座へと戻っていく。
「ああ、台無しだ」
「皇帝陛下…」
「陸軍大臣を呼べ」
キムのあからさまに不機嫌そうな声を聞いた、陸軍大臣がすぐさま駆けつける。
「はっ、皇帝陛下ここに」
「もっと攻めよ。そして兵を集めよ」
「ははっ」
キムは玉座に座り、足を組む。そこへ家臣の1人が慌てふためきながらやってきた。
「あの狼男が逃げました!我が兵も3人程、被害を…!」
「ええい、何をしている!必ず捕まえて銃殺刑にせよ!」
キムの荒々しい声が響き渡る。