朝が来た。私はゆっくりと布団から起き上がる。倦怠感も熱も大分引いて楽になっているのが分かる。

(薬草が効いたのかも)

 リビングは暖かい。熱を放つストーブの上にはケトルが置かれている。

「ナターシャおはよう」
「リークおはよう」
「昨日は良く寝れたか?」
「おかげさまで寝られたわ。…ホットミルクとおじやありがとう」
「いえいえ」

 リークは既に朝食の準備を進めていた。野菜がことこと煮込まれていく音が聞こえてくる。

「ナターシャ、熱測ってみようか」
「そうね…」

 熱は37.2℃。昨日よりかは下がってはいる。

「今日もゆっくりした方がいいな」

 というリークの言葉に私は頷いた。確かに熱が完全に下がりきっていない場面で無理をするのは良くないだろう。

「今日水晶窟と森の中を採集しに行こうと思うが、明日にしようか」
「いや、いいわよ…私に構わず行ってちょうだい」
「だが、今のナターシャをひとりにするのは…」 

 リークの心配そうな表情を見て、私は申し訳なさそうにじゃあ、明日にしましょう。と告げたのだった。

「よし、もう煮えたかな」

 リークが鍋を食卓テーブルの上にある木作りの鍋置きの上に置いた。

「シチューにしたんだ。鮭も入っている」
「美味しそうね」 
「これで、身体も温まるだろう」

 早速朝食のシチューとパンを頂く事にした。シチューにパンをつけて食べると、シチューの濃厚な味わいとシチューに浸される事で、柔らかくなったパンの味わいが口の中でじゅわっと広がる。

「美味しい」
「そうか、良かった…」
「身体も温まるわね」

 シチューが冷え切った身体の芯まで溶かすように、温まるのが分かる。それに鮭の旨味がしっかり効いている。野菜との相性も良い。

「ごちそうさまでした」
「ナターシャ、おかわりもあるぞ」
「いいの?」
「勿論」

 微笑むリークの言葉に甘える形で、私はシチューをおかわりした。