それから私は1.2時間程眠っていたようだ。目が覚めたのと同時に部屋の扉をノックする音が聞こえてくる。

「どうぞ」
「ナターシャ、起きたか?」
「ええ、さっきね」
「夕食が出来た。食べられる分だけ食べると良い」

 そう言ったリークについていくような形で、食卓テーブルの椅子に腰掛ける。
 まだ頬は熱っぽいし、全体的にだるい。

「どうぞ」

 リークが私の目の前に小鍋を置いた。

「薬草味噌と鮭の切り身でおじやを作ってみた。あと卵とネギも入っている」
「ありがとう、頂くわ」
「薬草入りだから、熱に効くはずだ」

 リークが用意した小皿にスプーンでおじやをよそい、冷ましてからおじやを一口分口に入れる。

「ん…」

 薬草味噌と鮭から出た旨味、そこにネギから出た出汁と卵が丁度良い感じに合わさってとても美味しい。

「美味しい、これなら全部食べられそうだわ」
「そうか、良かった」

 リークが微笑んだ。確かにこれなら今のような、食欲があまり湧かないシチュエーションでも美味しく頂く事が出来そうに感じる。
 そういえば、リークはもう夕食を食べたのだろうか。

「リークはもう夕食食べたの?」
「ああ、先に食べた。だからゆっくり食べて良いぞ」
「なんか、申し訳ないわね…」
「いや、気にするな。体調不良くらい誰だってある事だ」

 聞けばリークは幼い頃体調を崩した時、決まっておじやを食べていたようだ。

「おかゆよりおじやの方が、具がある分美味しいし栄養も取れると思ってな」
「なるほどね…」
「母親の作るおじやは美味しいんだ。今日作ったおじやにも生かされている」

 リークは自信を持ってそう答えたのだった。

「ごちそうさまでした」

 そんな彼の作るおじやを米粒1つも残さず完食し、私は自室でもう一度ベッドの布団に潜り込む。

(薬草の効果が早く出れば良いけど…)

 まだ頬には熱があるまま、時間が過ぎていく。