朝が来て朝食に昨日のミネストローネスープを食べると、ローティカの街へ買い出しに行く事になった。
 それにしても朝はかなり冷え込む。日用品をもっと買いそろえる必要がありそうだ。

「準備は出来たか?」

 と、リークに聞かれたので私は頷く。

「それでは行こう」

 中庭にある水鏡から、ローティカへ転移する。以前と同じ部屋の中へと到着すると、建物の外へと出て街へゆっくり歩きだす。
 街は以前よりも人が増えた。それに軍旗があちこちに見える。すると道のど真ん中で人だかりが出来ていた。どうやら新聞屋の男性達が号外を配っているようである。

「我が陸軍は快勝!順調に敵国を攻略しつつあるぞ!」
「狼男軍が大暴れしているようだ!」

 その言葉に私とリークは共に顔を見合わせながら、一瞬で血の気が引いていくのが理解できた。

「戦争が、始まったのか…」
「そう、みたいね…」
「やはり狼男も…戦争に駆られているのか…」

 リークの手が震え出した。私はその震えを見て、どうすべきかと迷った末、彼の手を取った。
 多分こういう時は握ってやる方が良い。

「リーク、大丈夫…」

 大丈夫では無いのは自分でも分かっている。だが、この言葉しか出てこなかった。

「ナターシャ…」
「…」
「ありがとう、ナターシャ。少し落ち着いた」

 リークの言葉通り、震えはほんの少しだけ落ち着いたようだ。私は少しだけ安堵の表情を浮かべる事が出来る。

「買い出し、行きましょうか」
「ああ」

 震える胸の内を我慢しながら、道を歩いていく。雑貨店を見つけたので、日用品を買いに入店した。私は必要なものを記したメモを見ながら、店内を進む。

「えーと、石鹸に、タオルに…あとは…」

 大体購入できただろうか。リークを見るとあるものに目が留まっているようだ。

「それは…?」
「飯盒だ。一応買っておきたいと思って」

 確かにあると便利かもしれない。私は買いましょうと言って、買うものが入った籠を会計へと持っていった。
 会計が済むと、今度は食品を買いに行く。