私はウサギの身体を濡れタオルで綺麗に拭いていく。思った以上に傷は浅いようだ。これならしばらくすれば治るだろう。

「ナターシャ。これを当てよう」

 リークが薬草を持ってきた。薬草を水でゆすいで傷口に薄く巻いた包帯の上にぴたりと当て、更にその上から包帯を当てる。薬草を包帯でサンドイッチするような感じだ。

「これで様子を見よう。あとは中庭に生えていた雑草を食べさせるか」
「ええ」

 ここで水気をよく切った雑草をリークから受け取り、ウサギの口元に近づけるとウサギはぱくっと雑草を食べた。

「食べたわ…!」
「とりあえず食欲はあるようだな」

 その後、リークはいずこから木のケースを持ってきた。そこに古いタオルを敷き、ウサギを入れる。

「傷がある程度良くなるまで、うちで様子を見よう」
「そうね」

 ここはリークの言う通りにした方がいいだろう。私は頷いて木のケースに入れられたウサギに視線を落とす。

(震えている)

 ウサギはまだ、細かく身体を震わせている。緊張しているのか恐怖感に苛まれているのか分からないが、生きた心地がしないだろうなというのは確かだろう。

「ずっと体が震えているわね…」
「温めた方が良いかもしれない」

 リークは自分の部屋から古いタオルを更に2枚ほど追加で持ってきて、ウサギを囲うようにして敷く。そしてウサギの背中を撫で続ける。

「うん、これでどうだろうか」

 するとじんわりとウサギの身体の震えが無くなっていった。硬くなっていた顔つきも少しだけ硬さがほぐれていったように見える。

「効果抜群ね、リーク」
「ああ、良かった…」

 リークも私もほっと一息つけたのだった。その後リークと今後のウサギについて話をし、傷と体力の回復を待ってから森へ離す事が決まったのだった。

「と言う訳で、よろしく」
「ええ、了解よ」
「薬草はまた森かローティカの街で入手するとしよう」

 リークとの話が終わると、改めて私はウサギの方を見た。

(私、前世はこんな事あっただろうか…)