質問は1つ浮かんだ事があった。それは私の衣服だ。リークに聞いた所、かつて母親が着ていた品が2つあるから、それを着ろと言われたのである。

「いいの?大事な品でしょう?」
「もうサイズが合わないから大丈夫だ」
「母親もここで暮らしているの?」
「いや、今はここから更に山奥の集落にいる」

 リークは1人で生活している事が判明した。確かに家の狭さは複数人で生活するよりも、1人での生活を想定しているようにも感じられる。

「じゃあ、いいのね?」
「いい」

 私専用になった寝室で服に着替えると、リークは先程私が着ていた服を後で補修すると言ってきた。

「出来るの?」
「出来る。よくしているから」
「そう…」

 勿論私は後宮での暮らしが長かった。まあ、着ていた服を直すのは侍女の仕事だったし、「モア」としても針自体持った記憶がおぼろげというのもあり、正直裁縫の自信はそんなに無い。

(うん、リークにさせた方が良いな)

 リークに服の補修を頼むと、リークは分かった。と言いつつも何か思いついたのか、そうだ。と話しかけてくる。

「お昼は?」
「あ…」

 そう言えばお腹が減ってきだした気がする。胃の中が少し、気持ち悪いようななんというか。

「お前も食うか?」
「何を作るの?」

 と、問うとリークは後をついてくるようにと私へ促す。ついて行った先には先程案内してもらった畑がある。

「にんじんを2本」
「取ればいいの?」
「ああ、これが良い」

 リークが指で指し示したにんじんを、私は根元からごっそりと抜いた。すると立派なにんじんが姿を現す。

「うん、良い感じだ。では家に戻るか」
「もういいの?」
「倉庫にも野菜を保管しているから」

 その後リークはキッチンの床下にある小さな倉庫から玉ねぎ2つを出し、にんじんを洗うと包丁で器用に皮を剥いていく。

「玉ねぎの皮を剥いてほしい」
「わ、わかったわ…」

 リークに教わりながら玉ねぎの皮を剥くと、リークはそれをざくざくと三日月状に切っていく。

「肉は…干し肉を使おう」

 手際良く調理を進めていくリークに私は、一体何を作るのかと質問してみる。

「カレーライスだな」
「カレーライス…!」