マッシュの家は2階建てである。リビングは広々としており、ふかふかのソファに大きな暖炉まである。

「わあ…」

　後宮内の貴賓室の一角とほんの少し似ている気がする。リビングの横にはこれまた広い台所があった。

「すごい…」
「うちは大家族だったからのう、もう2人しかおらんが」

　聞けば、マッシュとメイルとの間には10人子供がいるようだ。しかし皆成人しあちこちへと独立して暮らしているのだという。
　
「もう2人だけだと寂しいと思ってた頃にお客さんとはねえ」
「そうじゃのう」

　私はメイルへ改めて挨拶をした。

「まあ、ナターシャ。よろしくね」
「よろしくお願いします」

　挨拶が終わると早速夕食の準備に入る。リークが捕ってきた鹿肉の一部をブロック状に切り分けてシチューにする事になった。シチューとはいっても白いシチューでは無く、ビーフシチュー風のものである。

「野菜はにんじんとしいたけと、じゃがいもでいいわね。後は薬草も少し」
「そうしようかのう」
「私がシチューを作るわ。リークとナターシャ、野菜を切ったりするの手伝って」
「は、はい」

　野菜を切り終えると、鍋の中に入れてさっと炒めたのち、お肉をごろごろっと入れる。さらに炒めていくと水とコンソメと疲れに効くという薬草をぱらぱらっと入れて煮立たせていく。
　そしてもう一部の肉は細く細切れにしてばらばらにし、キャベツと炒める。

「うーん、いい香りね」

　メイルがシチューの入ったお鍋の香りをかいでいる。私にも嗅ぐようにと勧められたので試しに匂いを嗅いでみると、深みのある匂いがした。

（おいしそうだ）

　メイルお手製のルーを入れてより煮ていくとシチューが完成した。備え付けのこふきいもも載せて別皿にはキャベツとお肉の炒め物も盛り付ける。

「ライスもあるわよ」

　白いお皿にライスを盛って、夕食の完成だ。

「美味しそうじゃのう」
「美味しそうですね」

　私も思わずお腹が鳴る。これはボリュームがあって美味しそうだ。