今日は朝から準備に追われている。リークが質の良い水晶が沢山取れる「水晶窟」へ行く事になったので私も同行する事に決めたからだ。

「これでよしっと…」

　リュックサックに荷物を積み終えると、朝食を頂く。朝食は食パンにハムとスクランブルエッグを挟んだサンドイッチだ。ハムの塩気とスクランブルエッグの甘さが口の中で広がっていく。
　食べ終えると一息入れる間もなく支度を進めて、家を出た。

「ねえ、どこにあるの？」
「この山奥の中にある」
「水鏡は使わないのかしら」
「今回は使わない」

　リークについていきながら、うっそうとした森の中を進んでいく。ざくざくと草を踏む音と小鳥のさえずりだけが聞えてくる中、30分くらい歩き続ける。

（ふう…）

　顔からは次第に汗が流れ始めていく。この傾斜…どうやら今は山を登っているのだろうか。

「あと30分くらいでつく」
「わ、わかったわ…」
「休憩するか？お茶がある」

　リークが水筒を取り出し、水筒の蓋に薬草を薄く煎じたお茶を入れて私に差し出す。私はそれを受け取りゆっくりと飲んだ。

「身に染みる…」
「美味しいか？」

　苦みがほとんどなく、すっと飲める味だ。私はありがとうとリークに言って空になった蓋を返した。

「もう行けるわ」
「わかった、では進もう」

　こうして歩き続けてしばらくたつと、目の前の景色が開けて洞窟らしきものが見えて来た。

「この奥だ」

　洞窟に入り、中を少し歩くと目の前には圧巻の光景が広がっていた。

「すごい…！」

　水晶で出来た柱が、幾重にも立ち並び、折り重なって光を放っていたのである。