私は脚だけでは飽き足らず、手も伸ばした。自分で言うのもなんだが、まるでたこのようだ。

(癒される…)

 すると、ぺたぺたと足音が聞えて来た。私は慌てて座り直す。

「どうも、お隣良いですか?」

 やってきたのは、若い女性。長身且つ立派な体格の持ち主で、裸を隠す事無く堂々と私に見せているが、腹部や胸部など所々傷跡が見える。

「どうぞ」
「ありがとう。失礼するわね」
「いえいえ…その、染みませんか?」

 私はおそるおそる尋ねてみる。彼女は笑って大丈夫だと答えてくれた。

「これくらい慣れたわ。もうね」
「そうなんですか」
「それに湯治もあるもの。だから大丈夫よ。心配してくれてありがとう」

 聞けば彼女は貴族出身の御令嬢で元陸軍兵士だったのだという。キムの元へ側室として後宮入りする予定だったが自身がそう言うのには向いていないとして、女の身でありながら陸軍の兵士となったのだった。
 その後出世街道に乗るも、地雷魔法により足に負った大怪我が元で退役してからは、各地を1人で旅しているのだとか。

「貴族らしい生活も嫌気が指してたし。思い切って旅に出ようかなって思ったの」
「そうだったんですか」
「親もゆっくり私の思うままに生活すればよいって背中を押してくれたしね。金銭面考えたら御令嬢じゃなきゃこんな旅は出来ないと思ったわ。別荘も使い放題だし」
「良いですね、それ」
「あなたはどこから来たの?」

 そう問われ、私は悩んだ末に秘密です。と答えた。

「ああ、ごめんごめん。この後どうするつもり?」
「しばらくここで生活しよっかなとは…」
「じゃあ、うちの別荘使う?」

 彼女の突然の申し出に、私は驚くばかりである。

「いいんですか?」
「いいよ、私もしばらく旅はやめてこの街に住むつもりだし。戦争おっぱじまってるから危ないでしょ?」