リークは自室にあるピッケルを見せてくれた。これで金と水晶を掘ってさっき行ってきた街で売っていると教えてくれた。

「また今度来るか?」
「え?」
「一緒にいこう」
「…ええ!」

 後宮では、湯水のように溢れかえっていた金と水晶。その2つが採掘できる場所があると聞くと、私も興味が湧いてきた。
 今日買ったのは、食材一式と私の服とドレス。これだけあれば当分の暮らしは困らないだろう。

「なあ、ナターシャ」
「何?」
「このドレスは着ないのか?」

 リークがあのドレスを両手で優しく掴んで私へ見せてくる。

「…着てやってもいいけど」
「じゃあここで待つ」
(仕方ないか…)

 私はドレスを持って自室に入り、着替えて髪を結び直す。うん、髪型はこんな感じでいいだろう。部屋を出てポーズを取りながらリークにドレス姿を見せた。

「どうかしら?」

 リークは目を見開く。その表情はまるで、初めて見た。と言った具合のものだった。

「綺麗だ…」
「そう?」
「ああ、間違いなく綺麗だ」

 リークの目は穏やかで、うっとりとしている。耳もリラックスしている状態だ。もしかして、私に見とれてしまっているのだろうか。

「見とれてる?」
「ああ、思わず…」
「そ、そう…」

 なんだか顔が熱くなってきたので、自室に戻ってドレスを脱ぎ、普段着へと着替えたのだった。

(…恥ずかしい)

 着替えてリビングに戻ると、リークと目が合う。

「あ」
「…」

 少し気まずい空気が流れたが、すぐさまリークがごはんの準備をしようと言って、席を外した事でいつも通りの空気に戻ったのだった。
 しかし、胸のドキドキは中々収まらなかったのだった。

(はあ…)

 昼食はミートスパゲティとサラダだ。ミートソースとあるが、今回使ったのは鹿の肉を干したものをリークが刻んだものだ。
 トマトとスパゲティの乾燥麺は先ほど、商店で購入したものである。

「うん、美味しい…!」

トマトを潰してペースト状にして肉と合わせてソースにし、ぐつぐつ強火で煮込んだミートソースは濃厚がつ深みがある味わいで、更にリークがナイフで削ったチーズとも合う。

「すごい、美味しい」
「麺多めに茹でて置いてよかったな」
「これなら、食欲が無い時でも食べれそうね」
「ああ、パンにも合いそうだ」

 確かに、パンの上にこのミートソースをかけて食べるのもありかもしれない。