「は?何?」
「何って見てわかるだろ」
「はぁ? つか誰だよお前」
「もう忘れちゃいました?」

そう言って眼鏡をとって、ぐいっと前髪を上げる。


「振られたんなら大人しく諦めたらどうです? それともまた尻餅つきたいんですか?」

「おっ、まえは!」


驚いたように口をぱくぱくとさせた先輩は、それ以上何も言えずに、くそっと吐き捨てて屋上から逃げて行った。


「え、なに?」
「急にどうしたの?」

自分たちが出ていくはずだったのに、先輩に先を越されたせいで困惑している外野達。


「つーかお前らもいい加減にしろよ」

振り返ってそう言った青野くんは、眼鏡も前髪も取り払ったまま。


「え、地味野!?」
「まじで!?」
「イケメンじゃん!」

変に色めき立つ中、マリアちゃんだけはいつもの笑顔で静止していた。


「吉川」

青野くんがマリアちゃんと対面する。


「いい加減、こんな幼稚なこと辞めろよ」

マリアちゃんは何も言わなかった。