あれから土日を挟み、月曜日となった。なんとなく憂鬱な気持ちで、どんよりと体が重たかった。
そんな私の気持ちが空にまで響いたのか、天気は曇り。

いつもと変わらない通学路を歩いていると、誰かに肩に手を置かれた。

「元気ねーな」

そんな私に声をかけたのは、やはり優太。

「なんだ、優太か……」

「そればっかじゃねぇかよ」

苦笑する優太は、まるで疲れを感じさせないような若々しさを感じる。私と同い年だけど。

「それで、今日も放課後最後まで一年待つわけ?」

「うん?当たり前じゃん!」

そう言うと、優太は眉間にシワを寄せた。

「なんでそんなにその男に構うわけ?来ないくせに待ってても、お前の時間が無駄だろ」

「だってちょっと気持ち揺らいでたもん」

今日こそは来てくれる、と、謎の自信があった。だって、待ってるから、って言った時、足を止めようか迷ってる様子だったもの。

「お人好しがすぎるんだよ」
「それしか私に取り柄なんてないもんね、はいはい」

いいですよーだ、とそっぽを向いて歩くスピードを速めると、優太は再び呆れたように笑った。

「ちげーってば、そんな機嫌悪くすんなよ、な?」

___それにしても、本当に来てくれるだろうか。もしも今日来てくれなかったら、もう諦めようかな。でも先生になんて言おう。

そんな憂鬱な気持ちを振り払うように、さらに歩くスピードを速めた。




「海花、最近どうなの?教育係」

昼休み。
中庭でお弁当を広げる私の隣でポニーテールを揺らす彼女は、友達の詩織。

三年生になって、初めて関わったのだけれど、好きなドラマが同じで意気投合。それからは、よく俳優さんやテレビ番組の話をしていくうちに、休み時間も一緒にいるくらい仲良くなったのだ。

「それが全然来てくれなくて……」
「えぇ……でもいつも、放課後待ってるの?」

こくりと頷くと、詩織は「そうなんだ」と不思議そうに頷いた。

「噂になってるよね、例の一年生」
「えっ、そうなの?」

噂話とか、そういうの全然聞かないな。

「うん。その人、すごいモテてるらしいよ。年上の人とかからも告白の呼び出しが絶えないって」

もしかしたら、彼女とかいるのかもね。と呟く詩織の言葉を聞いて、ふと思った。

___そっか、もしあの人に彼女さんがいたとして。放課後、女子の私と二人きりで勉強するとか、普通に考えて嫌だよね。

「……そこまで考えてなかった、かも」

しかもそんな女子から放課後「待ってるから!」なんて言われて、そんなの私がやばい人じゃん。
まるで告白の返事を待つ人みたい。

「じゃあ今日来なかったら___」

諦めようかな、そう言おうとした時だった。






"なあ"





そう、背後から声をかけられたのは。