窓の外は、雪が舞っていた。

そういえば、初雪になるかもと朝の天気予報で言っていたような気もする。

そんなことも思い出せないほど、仕事に勤しんでいたのか。

こんなやるせない思いは、酒を飲んで消化するしかない。

馴染みのバーに行くと、客は数えるほどしかいなかった。

カウンターのバーテンダーと、何だかしみじみした話をしている女性に目がいく。

女性にしてはアルトの音域の声が耳に入って、目線がついそちらに向いた。

間違えるはずはなかった。

学生時代から、叶うはずないと淡い恋心を押し込んでいた、彼女がカウンターにいたのだ。

……三上 夏南(みかみ かな)

俺の学生時代の、世界史の教師だ。

担任になったことはなかったが、移動教室の途中や昼休みなど、俺を気にかけていろいろ話しかけてくれたのだった。

今日は行きの電車が遅れて朝礼に間に合わなくて怒られたなど、他愛のない話だった。

俺にはそれが嬉しかった。

それからだ。

ほんの少し、三上先生を意識し始めたのは。